前回まででパーツ単体の型取りが完了しましたので、今度は丸型の作成を行います。
丸型の準備、仮配置
丸型はアルミ製で底が直角になっている物を用意します。
画像の物は直径24cm、1500円くらいで購入できます。
ひとまず型にパーツを並べてみましょう。
画像のように真ん中に円を描いておくと、後でパーツやコップを配置する際の目印になってやりやすいです。
ここで重要となるのがパーツを置く向きです。
レジンは中心から外側に向かって流れていくため、なるべくレジンが流れやすく空気が溜まりにくい方向を考えなければいけません。
パーツ形状によって条件は様々ですが、以下の事に気を付ければ大抵の場合は何とかなるでしょう。
・中心から外側方向に向かってなるべく縦向きに置く
・最終的に見えない部分など、最悪気泡が残ってしまってもいい面は中心に向ける
・平らで広い面や、返しのある面を中心に向けない
・ディテールの濃い複雑になっている面、髪の毛や手指など幾多に分岐していて先細りになっている部分を外側に向ける
パーツを詰めすぎると型の噛合いが不安定になるので、ここでもパーツのシリコン同士の隙間は最低1~2cmくらい空けましょう。
(台形の上側の角が空いていればいいので、下の角は接触しても構いません)
パーツ配置のイメージができて型に使うパーツが決まったら、一旦全部のパーツを取り出します。
【パーツの高さ、角度の微調整】
使うパーツを見比べて、あまりにも分割線の高さに違いがあったり、分割線が斜めを向いていると良くありません。
シリコンの底をカットして、なるべく全てのパーツの分割線が同じ高さ、平行になるように調整します。
丸型 下面の形成
シリコン硬化後に型を取り出しやすいよう、丸型の内側にワセリンを塗り込みます。
使い捨てのビニール手袋を使うと手がベタベタにならずに済みます。
続いてシリコン液を流し込みます。
数回に分けてシリコン液を流すので、最初は容器の底に薄く広がる程度の少な目がいいです。
真空脱泡機をお持ちの方は脱泡します。お持ちでない方はなるべく気泡が減るまでしばらく置いた方がいいでしょう。
※前回登場したシリコンくずですが、この後パーツを置くのに邪魔になるのでこの時はシリコンくずは使わない方がいいです。
最初仮配置したのと同じようにパーツを並べていきます。
パーツにシリコン液が付着しないよう気を付けながら、再度シリコン液を適切な高さまで投入します。
隅の方はパーツのシリコンに阻まれてシリコン液が流れ込んでいかないので、紙コップなどに液を移し替えて丁寧に注ぎ込みます。
シリコン液の適切な量ですが、分割線の5mm~1cmくらい下を狙って液を流し入れます。
パーツの分割線とシリコン液面との段差は、シリコン型を嚙合わせるための溝としての役割も果たすため、ある程度差があった方がいいです。
しかし、段差が大きすぎると逆に噛合いにくくなったり、後でゲートを彫る際に苦労します。5mm~1cmくらいが理想です。
※パーツを配置後は真空脱泡機は使用できません。シリコンが泡立ってパーツが浸かってしまいます。
時間を置いて気泡が落ち着いたら、型の真ん中にプラ製のコップを浅く乗せます。
このコップがレジンキャスト液の注ぎ口になります。
(途中でコップが傾いてくることがありますので、しばらく様子を見ながら傾いてきたら真っすぐに直しましょう)
シリコンが完全に硬化するまで待ちます。
丸型 上面の形成
下面の硬化が完了した状態から再開です。
パーツ表面をよく見て、もしシリコンが付着していたら取り除きます。
ここでシリコンの付着を見逃してしまうと、最悪そのパーツは正常に複製できなくなります。
私も何度か失敗したのでお気をつけて。
問題なければ、シリコン表面に離型材を塗ります。
離型材が乾燥したら、上面のシリコン液を投入します。
上面のシリコン形成時は、真空脱泡機をお持ちでない方でもシリコンくずを使用していいかもしれません。
・上面は単純に流し込むだけで、後の加工が無いため
・空気は上側に向かっていくので、パーツ付近には残らずあまり影響しないため
その場合、まずシリコン液だけを浅く投入してパーツ表面に気泡が残っていないのを確認した後、シリコンくず投入→残りのシリコン液投入とした方が確実です。
脱泡機をお持ちの方は脱泡しましょう。シリコンくずもあればじゃんじゃん使ってください。
ここで上面の厚さが薄すぎると、プラコップとの接着面積が狭くなって摩擦が少なくなり、複製の際にコップが抜けてしまう恐れがあります。
コップとの接着面積が3~4cm以上になるのを目安に、なるべく多めにシリコン液を流しましょう。
シリコン液が硬化するまで放置します。
十分硬化したらシリコン型をアルミ丸型から取り出しましょう。
ゲートの作成
シリコン上面・下面が完成したので、次は型にレジンの通り道であるゲートを彫っていきます。
ゲートを彫るには専用のゲートカッターを探す手もありますが、100均のカミソリを改造すると安価に自作できるので私はそれを使用しています。
※カミソリ刃の改造は大変怪我をしやすく、怪我の程度も笑えないので、自作する際は細心の注意を払ってください。
何が起きても自己責任の覚悟でお願いします。
早速ゲートを彫っていくわけですが、ゲートにも理想の条件があります。
遠心複製型において最も理想的な形は恐らく下の左の図のような形ですが、ここで紹介した作り方で作ると実際には右の図のようになります。
ここは型取りの段階でもっと改善できる方法があるかもしれませんが、それは今後の課題として考えておきます。
なるべく理想の形に近付くよう意識しながらゲートを彫っていきましょう。
まずは各々のパーツの中心から型の中心に向かって、一本ずつなるべく真っすぐにゲートを彫っていきます。
この時ゲートはパーツの直前で彫るのを止めて、まだパーツと繋げないようにします。
次に、空いているスペースにもパーツの斜め横からゲートを伸ばしていきます。
隣のパーツと線がぶつかり合う箇所は、下の画像のようにYの字に繋げてしまって問題ありません。
太いゲートが彫り終わったら、今度はゲートの先端からパーツに向かって、カッターで細いV字の溝を作ります。
画像では分かりづらいですが…
遠心力を使えばこれくらいゲートを絞ってもなんなく抜くことができます。
パーツとゲートの干渉が少ないほど、元の形を崩さず維持できて後処理も楽になります。
大きめのパーツは、下の画像のように細線の数を足しましょう。1本を太くするよりもこちらの方が処理は楽です。
※最初の段階ではゲートの数はかなり少な目でOKです。
一度ゲートを足すと後戻りができないため、まずはテストショットで抜け具合を確認して、駄目だった所だけゲートを改善した方が最終的にいい結果になります。
最初は不安ですが、きっと想像しているよりも存外簡単に抜けてくれます。
ゲートを彫り終わったら、最後の仕上げとして上面の穴の下部分をカッターで面取りします。
こうすることで入ってきたレジンがより内部へ流れ込みやすくなり、空気の抜けも良くなります。
今回はここまで、 次回は型をセットしていよいよ複製開始となります。
それでは。