前回までで瞳データを作成できましたので、 今回は瞳データをシール用紙に印刷してサイズ調整~デカール用紙への本番印刷までの手順を紹介します。
画像の保存
まずは前回作った瞳データを画像に書き出して保存しましょう。
肌色レイヤーを含めすべてのレイヤーを表示させた下の画像のような状態で、「ファイル」→「画像を統合して書き出し」「.png(PNG)」を選択して、png形式で保存します。
設定ウィンドウが出てきますが内容変更せずそのままOKで。
※もし以前に変更した設定が残っていた場合は、下の画像を参考に設定を合わせてください。
【png形式とは】
一般的なjpeg形式は聞き馴染みがあっても、png形式はあまり聞き慣れない方も多いかもしれません。
png形式はjpeg、gifといった画像形式の種類の中の一つで、「透明情報を保持できる」「圧縮しても画質が劣化しない(元に戻すことができる)」という特徴を持っています。
元の品質を保ちつつ、jpeg等と同様ほとんどのソフトで互換性のある形式なので、今回のように品質の劣化を防ぎたいような画像の場合はpng形式での保存がおすすめです。
ファイル名は「元データ」としておきます。
A4印刷用キャンバスの作成
「ファイル」→「新規」を選択してキャンバス設定ウィンドウを開きます。
ここではサイズを「A4」に指定して、「解像度600」で作成します。(解像度は瞳データ作成時のキャンバスの数値と合わせます)
Photoshopの方は「CMYKカラー」で。
元データ画像の取り込み
これからサイズ調整用のデータを作っていきます。
「ファイル」→「読み込み」→「画像」を選択して、「元データ.png」の画像をキャンバス内に取り込みます。
レイヤーを右クリックして「ラスタライズ」を選択し、編集可能にします。
図のように、周りの要らない肌色を「選択範囲→Delete」で消去して、両目の間の隙間を「選択範囲→移動」で詰めます。
テキストツールで「+」の文字を入力して、そのレイヤーを複製し両目の中に置きます。
テキストの色は、目の上に置いた時に分かりやすい色にしましょう。
(作例では目が黒っぽいので「+」マークを白色にしています。)
※この「+」マークは、この後サイズ調整で瞳のシールを顔パーツに貼り付ける時に、角度を正確に合わせやすくするための物です。
瞳のレイヤーと「+」の文字のレイヤー2つを結合して一つにまとめて、レイヤー名を「100100」に変更します。
サイズ差分の作成
基本のサイズの瞳ができたので、今度はこの瞳のサイズを細かく変更した差分を作っていきます。
たくさんの差分を用意した中から、一番見た目に違和感のないサイズの瞳を実際に貼って探していきます。
サイズの差分をどれくらい用意するかは個人の自由ですが、ここでは私の今までの経験から最適だと思っている
・横「×1.00」「×1.05」「×1.10」
・縦横「×1.00」「×1.02」「×1.04」「×0.98」「×0.96」
のパターンで作っていきます。
何を言っているのか分からないと思いますが慌てずに、作りながら順を追って説明します。
横の差分の作成
「100100」レイヤーを複製してレイヤー名を「100105」に変更し、レイヤーも画像も「100100」の瞳の下に移動させます。
「100105」のレイヤーを選択したまま、「編集」→「変形」→「拡大・縮小」を選択して、「ツールプロパティ」というウィンドウにある「縦横比固定」のチェックを外し、横を「105」に変更して確定します。
上記の方法と同様に、「100100」の横幅を「110」に拡大した「100110」レイヤーを作成し、「100105」の瞳の下に移動させましょう。
(※間違えて「100105」のレイヤーを複製して横幅を「110」にしないように注意してください。複製元は両方とも「100100」です。)
これで横幅の拡大率が 「×1.00」「×1.05」「×1.10」 の瞳が3つ縦に並びました。
最後に3つのレイヤーを結合して1つにまとめ、名前を「100」にします。
縦横の差分の作成
今度は縦横に拡大・縮小した差分を作っていきます。
先ほど作った「100」レイヤーを複製して名前を「102」に変更し、レイヤー・画像ともに「100」の瞳の下に移動させます。
「編集」→「変形」→「拡大・縮小」を選択して、今度は「縦横比固定」のチェックを入れて、縦と横をそれぞれ「102」に変更して確定します。
チェックを入れ忘れたまま進んでしまいやすいので注意しましょう。
同様の手順で、「104」「98」「96」の差分も作ります。
仕上げにテキストツールで各段の瞳の横に「100100」「100105」…と名前を付けていき、印刷の予備として瞳のレイヤーを全部複製して横に並ばせます。
【横だけに引き延ばす差分を作る理由】
瞳デカールを貼り付ける部分の表面は、縦の円柱のようになっていることが多いと思います。(というより私の作る顔パーツが全てそうなっています。)
その場合、下の図を見れば分かる通り、PCの画面で見ていた時の横幅に比べてパーツに貼るデカールの横幅の方が広く、実際に貼り付けた時に横幅が足りなくなることになります。
実際にどんな見え方になるかはパーツによって異なるため貼り付けてみるまで分かりませんが、「横に引き延ばした方がサイズが合う可能性が高そう」という観点から、横幅方向だけの差分も用意しています。
シール用紙に印刷
A4の光沢シール用紙をインクジェットプリンターにセットします。
用紙は100均にある安価な物でOK。
「ファイル」→「印刷」を選択して、印刷ダイアログを開きます。
使っている用紙の設定に問題なく合っていれば印刷を開始しましょう。
【サイズのズレに注意!】
お使いのプリンターによってプリント設定方法が違うためここでの説明は省きますが、設定によっては「チェックが入っていると印刷サイズが変わってしまう物」があります。
プリンターの名前の横にある「プロパティ」をクリックして設定画面を開き、サイズが変わりそうな項目があれば変更して「等倍印刷」になるようにしておきましょう。
(私は以前「フチなし印刷」で印刷サイズが変わることを知らずに失敗していました…)
確実にサイズを確認したい方は、「元データ.png」の画像を「A4・解像度600」のキャンバスに取り込んだままの状態でコピー紙などに印刷してみて、縦横が「5cm × 5cm」になっていれば問題ありません。
顔パーツに貼り付けて比較
印刷したシール用紙を切り取って、顔パーツに貼り付けていきます。
髪パーツの有無でも印象が変わるので、顔パーツだけでなく髪パーツを付けた状態も確認しましょう。
「+」マークを縦横の目印にして貼り付けると角度を合わせやすいです。
上下左右あらゆる角度からじっくり見比べて、「これだ!!」と思うサイズの瞳を見つけてください。
【瞳選びは大きめのサイズを】
ここで選ぶ瞳のサイズは、「理想の大きさよりも少し大きめ」を選ぶのが失敗しないコツです。
理由は以下の2つです。
・シール用紙とデカール用紙の厚みの違い
一般的なシール用紙はデカール用紙に比べて分厚く硬いため、パーツの曲面に完全に吸着せずに少し飛び出たようになります。
対してデカール用紙は極薄で柔らかく、パーツ曲面にぴったり吸着するので、シールで見た時より一回り小さく見えます。
・大きい方が違和感が少ない
瞳が標準的なサイズから多少大きくなったとしてもそこまで変には感じませんが、逆に標準サイズから小さい瞳は違和感バリバリです。
人の見た感じの印象は案外不安定な物で、明日になればガラッと変わっていることもあるので、大きめに作っておいた方が後で後悔する事が少ないです。
残り2択でどうしても迷うような場合は、大きめの方を選んでおきましょう。
【インク汚れに注意!】
プリンターによっては、十分乾燥したと思っていても印刷面に触るとインクが指に付着し、そのままパーツに触って汚してしまうことがあります。(私の実体験です)
クリアコートしたツルピカのパーツならまだしも、艶消し処理後のパーツに汚れが付くと修復は絶望的ですので、インクの汚れには注意しましょう。
ピッタリのサイズが決まったらその数値を控えておきます。
デカール用紙に印刷するデータの作成
サイズが決まったので、デカール用紙に印刷するための本番用のデータを作成します。
前回お話しした通り、デカール用紙は「下地が白」「下地が透明」の2種類を使用しますので、瞳のデータも「白用」「透明用」の2つ用意する必要があります。
白色デカールの上に透明デカールを重ねて貼ることになりますので、一応そのことを頭に入れておきましょう。
一旦瞳データ作成時の5cm四方のキャンバスに戻って、「白用」「透明用」の画像データをそれぞれ作成します。
「白用」データの作成
白用のデータで使うレイヤーは「肌色」「白目(影レイヤーは不要)」「枠線」の3つですので、「肌色」と左右の「白目」「枠線」で 計5つのレイヤーを選択して複製後、レイヤーの一番上に移動させます。
「枠線」のレイヤー2つを結合して1つにし、「編集」→「色調補正」→「色相・彩度・明度」を選択して、明度を「90」くらいまで上げて薄い灰色になるようにします。
テキストレイヤーで「+」の文字を入力し、「薄い灰色」で両目の中に入れます。
※ここでの「+」は、「瞳」のレイヤーに重なって見えなくなるように大きさ・位置を調整しましょう。
色も白下地に対して見えるか見えないかくらいの「薄い灰色」を選びます。
ここでの「+」もあくまで角度を合わせやすくするための目安なので、「瞳の色が薄い・瞳が小さい」などの理由でどうしても入れられないような場合は省いてしまって構いません。
「肌色」「白目」「枠線」と、2つの「+」を全て結合して1つのレイヤーにまとめ、名前を「白用」に変更します。
「透明用」データの作成
透明用のデータで使うレイヤーは「肌色」を除く「アイシャドー」~「ハイライト2」全てです。
必要なレイヤーを全て選択して複製した後レイヤーの一番上に持っていき、結合し1つのレイヤーにまとめます。
レイヤーの名前を「透明用」に変更します。
デカール印刷用png画像の書き出し
新規レイヤーを作成し、真っ白に塗りつぶした「白背景」レイヤーを用意します。
上から「白用」「透明用」「白背景」の順になるようレイヤーを並べ替えます。
このままの状態で「ファイル」→「画像を統合して書き出し」→「.png(PNG)」を選択して、白用の画像をpng形式で保存します。
続いて「白用」を非表示にし「透明用」「白背景」を表示させた状態で、同様に透明用の画像をpng形式で保存します。
ファイル名はそれぞれ「白用」「透明用」としておきます。
瞳データの取り込みとサイズ調整
「ファイル」→「新規」を選択して「A4」「解像度600」のキャンバスを作成します。
サイズ合わせに使ったシール印刷用のキャンバスを使い回しても構いません。その際はこれまでに作ったレイヤーは全て非表示にするか削除しましょう。
「透明用.png」「白用.png」の画像をキャンバス内に取り込みます。
レイヤーをラスタライズ後、周りの余分な部分は削除しましょう。
今回は目と目の隙間を詰める必要はないです。
(サイズ合わせの時に目と目を詰めていたのは、私が本番制作中に4体分の瞳を同時に作っていたのでA4印刷に入りきらないためでした。印刷スペースに余裕があれば隙間詰めはしなくて構いません。)
白用は眉毛の部分は不要なので、下図のように切り落としていいです。
「白用」「透明用」の2つとも、それぞれ「編集」→「変形」→「拡大・縮小」を使って、サイズ決めの時に控えておいたサイズ比を 「ツールプロパティ」に入力してサイズを変更します。
例)選んだサイズ比が「102105」だった場合、縦横を1.02倍した後に続けて横幅だけを1.05倍します。
レイヤーを複製して予備を横に並べます。それぞれ4つくらい用意しておけば安心。
「透明用」「白用」ごとにレイヤーを結合してまとめ、キャンバスの上端に移動して寄せたら印刷準備完了です。
キャンバスの端ギリギリに寄せすぎると印刷が切れてしまうことがあるので、少し内側に入れて余裕を持たせましょう。
「透明用」「白用」はそれぞれ別の紙に印刷するので、画像が重なっていても問題ありません。
デカール用紙に印刷
シール用紙に印刷した時と同様に、デカール用紙に印刷します。
透明用紙には「透明用」レイヤーだけ、白用紙には「白用」レイヤーだけを表示させて印刷しましょう。
【余白部分がもったいない!】
よほど大量生産でもしない限りは一度の印刷でA4用紙が全部埋まるようなことはないため、用紙の大部分を無駄にするのはもったいないと思いますよね。
多少荒業になりますが、用紙からデカールの印刷部分を切り取った後、残った白紙部分をそのまま給紙して再利用することができます。
(※ お使いのプリンターによってはできない場合もあります。プリンターの動作を保証するものではありませんので、実践は自己責任でお願いします。)
注意として、A4より短いサイズの紙にA4として印刷する事になるので、紙が小さくなった分だけ印刷がはみ出ないようにデータの範囲を調整する必要があります。
デカール用紙は高価ですので、使えるギリギリまで残して使うようにするとお得です。
↑真っすぐ直角に切れる断裁機があると便利!
デカール用紙への印刷が完了しましたので、次回はいよいよ顔パーツへの貼付けを行っていきます。
それではまた次回。