いよいよ今回で最後の紹介になります。
腕と根気が試されるので、心して挑みましょう。


型のセット

ゲートを彫り終えたら、型をセットして複製の準備に入ります。

シリコン型上面下面を重ね合わせて、型の側面にラップを巻きます。
( 合わせ目からのレジン漏れ対策 )

鋼板とクランプで型を固定します。

鋼板はホームセンター等で手近に入手できればいいのですが、私はどこを探しても見つけられなかったため「鋼屋」という通販サイトで注文して作ってもらいました。
今回初めてだったので厚めの6mmを用意しましたが、2~3mmくらいで十分だと思います。(6mmはかなり重い)

プラコップの底を切り取り、型の穴に刺します。
(底をカットしないとゲートを塞いでしまう)

最後にマジックテープ付きのゴムバンドを巻いて、セットの完成です。

後は複製時に使用する以下の物を用意しておきます。
・ ラップ( 四角に切って真ん中に小さな穴を開けておく)
・輪ゴム数本
・紙コップ
・割りばし
・レジンキャスト液
・電子はかり

ここまできたらいよいよお待ちかね、複製開始です。


複製

手回し遠心機(手動の洗濯脱水機)を用意しましょう。通販で6千円程度で入手できます。

手回し遠心機に型のセットを入れます。
(不意の事故によりレジンが飛散した場合に備えて、型はビニール袋に入れます。)

一旦ふたを閉めて、きちんと回るかどうか確認しておきましょう。
重心が大きくずれていたり傾いていたりすると回転時にぐらつくので、型を入れ直してぐらつかないように調整します。

レジンキャストA液・B液をそれぞれ紙コップに適量用意しましょう。

レジン液を投入してからはスピード勝負になります。

心の準備が出来たら、レジン液を割りばしで素早く混ぜて、型のコップに投入します。

用意していた四角いラップをコップに被せたら輪ゴム数本で留め、さらにマジックバンドをコップの上に掛けます。
コップがずれたり曲がったりすると隙間からレジンが溢れ出てくるので、ここだけは細心の注意を払ってゆっくり行いましょう。

手回し遠心機の蓋をして、ハンドルを回して回転させます。

程よく回転させたら中の型を取り出し、レジンが硬化する前にコップを抜きます。

※コップを刺したままレジンが硬化してしまうと後で抜くのが困難になります。忘れずに抜いておきましょう

ざっと手順だけ説明しましたが、回転の力加減がかなり難しいため、失敗しないようになるまで体感的な経験が必要です。

回す力が弱ければ当然型の隅々までレジンが行き渡らず、逆に回転が強すぎると型の合わせ目からレジンが漏れたり、遠心力によってコップの中のレジン液が上昇し、コップを押し上げてコップが抜けたりします。

最適な回転量は型の作りによって異なるため、実際に試してみるまで分かりません。

最初のテストショットは失敗する事前提で挑んで、まずはその型の最適な回転量を探ることに集中しましょう。

【上手くいくためのコツ】
・レジン液の量は多めにする。
・回転は2段階に分ける。
 最初は軽めに回して全体的にレジンを行き渡らせ空気を抜き、一旦回転を止めた後最後に短時間だけ高速で回して細部を抜くようにする。
・回転は速くしすぎない。
・クランプは締め付けすぎない。(パーツの変形に繋がる)

【上手くいかなかった場合の対策の一例】
・パーツに気泡が残る
 気泡が残っている付近に細いゲートを足す。
 駄目なら同じ個所で上面の型の方にも細いゲートを追加する。
 空気溜まりになっている箇所がないか探し、ゲートを修正する。

・パーツに十分にレジンが行き届かない
 パーツの両側面まで太いゲートを伸ばし、ゲートの接続箇所を増やす。
 太いゲートを広げてさらに太くする。
 細いゲートの数を増やすか太くする。

・全部のパーツ、ゲートの途中に気泡が多く残る
 レジンの量が足りていない可能性があるので、レジン投入量を増やす。

【補足】
コップに被せるラップの真ん中に小さな穴を開けていますが、これはレジン液が反応する際の発熱でコップ内の空気が膨張してラップが膨らみ、コップのずれに繋がるため空気を逃がすために空けています。

今回1/8スケールの大きなパーツに対応させるために、型の直径を前回の22cmから24cmに広げましたが、型が手回し遠心機に入りきらず、中の回転層の加工を余儀なくされました。
お手持ちの遠心機のサイズを確認して、余裕のある型作りを心掛けましょう。

噂によると、回転機構に「電動砥石機を改造して使う」といった手法もあるそうです。
私も今後研究の題材として取り扱うことがあるかもしれません。

レジンが十分硬化したら、型を開いてパーツを取り出します。

※ パーツは手でもぎ取ろうとするとゲートがパーツの付け根で折れてパーツ表面が欠損します。

先にニッパーでゲートの細い部分をカットすると安全に取り出せます。

型に残った小さなごみなどを取り除いて綺麗にしたら、再度型をセットして素材集めの周回プレイに励んでください。


注型の様子を動画にしたので参考にしてください。


おわりに

今回紹介した「一般家庭で簡単に実践できる遠心型複製 2020年改良版」、いかがだったでしょうか。

自作ガレキ製作を始めておよそ3年間、今まで様々な複製方法を試しては効率のいい方法を模索してきましたが、この遠心型複製を取り入れてから複製の効率は格段に向上し、もはや私にとって手放すことができない手法となりました。

まだまだ改善できる余地は残されていますが、型取りの方法や使用する器具を見直すことで、前回よりもさらに精度の高い複製を行えるようになったと思います。

ただし、この遠心型複製の成功確率は相変わらず経験的感覚に依るところが大きく、それはこうやって文章でいくら説明しても伝えきれない部分ですので、ここからはぜひとも読者ご自身で体験していただき体感的に会得してもらいたいです。

ここで紹介した作例はあくまで私の知識経験・私の環境での最良と思われる方法にすぎません。
「私だったらこうする」「この方がやりやすい」といった意見はあって当然だと思いますし、むしろそうやって自分のやり方に合うようにどんどん改変して皆さん自身のモノにして利用していただければ、私としても嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました、この記事で紹介したことが皆さんの製作の中で少しでもお役に立つことができれば幸いです。

それではまたどこかで。素敵なガレージキットライフをお過ごしください。

2 thoughts on “一般家庭で簡単に実践できる遠心型複製 2020年改良版 その3”

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。