前編までで瞳データを作る下準備が整いましたので、後編では実際に瞳データの作成を始めていきます。

ここで紹介する方法では「下地が白」「下地が透明」の2種類のデカール用紙を使用しますので、最終的に瞳のデータも「白用」「透明用」の2つに分けられます。

それぞれのデータの構造を画像で表すと、こんな感じになっています。

※各部位の名前は実際の身体の名称とは一部異なりますが、説明の便宜上このような名前を付けています。

キャラクターイラストをあまり描いた事がない人だと「多っ!」「複雑すぎ!」って感じるかもしれませんが、手順通りに一個一個作っていけば案外簡単にできますのでご安心ください。

なるべく画像編集ソフトを使った事が無い人でも操作が分かるように説明していきますが、もし「説明したやり方が分かりにくい」「なんでそうしてるの?」と思う方がいれば、以下のTwitterアカウントなどで質問を受け付けますのでお気軽にご相談ください。

Twitterアカウント→  https://twitter.com/Aoto46

ここでの紹介で作る瞳は”私の中でおおよそ一般的だと思われる美少女キャラクターの瞳”です。

キャラクターによって瞳の造りは千差万別ですし、フィギュアのデフォルメ具合や時代の流行り廃りなどでも変わってきます。

作るキャラによってはここでの作法が通じない場合も当然出てきますので、自分の作りたいキャラと照らし合わせて対応してください。

また、手順を応用することで「男性キャラクター」や「モンスター」などのデカールも作成可能です。

それでは大変お待たせしました、次の項から実際に瞳を作っていきます。


瞳の作成:枠線

最初に上まぶた、下まぶたの線を作ります。

レイヤーパレットで「新規ラスターレイヤー」をクリックして新規レイヤーを作成します。

今回の紹介ではラスターレイヤーしか使用しません。今後説明で出てくるレイヤーは全てラスターレイヤーの事です。

ツールパレットから「範囲選択」の「折れ線選択」を選んで、資料を参考にしながら「上まぶた」の形に選択領域を作ります。

 

カラーパレットで「黒に限りなく近い茶色」を選んで、「塗りつぶし」を選んで一色に塗りつぶしましょう。

塗りつぶした後は選択領域外をダブルクリックして選択を解除します。

 

同じ要領で下まぶた・二重まぶた・まつ毛・眉毛なども同じレイヤーに描き込んでおきます。
眉毛は髪の色に近い色に変更して塗りつぶします。

「選択範囲」→「塗りつぶし」で色を塗るとカーブの部分に角ができるので、ブラシ(硬い)や消しゴム(硬い)などで滑らかになるように修正します。

資料と見比べて形を変形させたり、まつ毛の量や長さなどを調整したら「枠線」レイヤーは一旦完成です。

選択範囲ツールを使わずにブラシだけで描いてもOKです。各自やりやすい方法で作りましょう。

反対側の瞳は片方を全部作った後でまとめて複製・反転して作成するので、作るのは片方の瞳の分だけでOKです。
(ウィンクしている等で左右の目の形が違う場合は別途作成します。)

※ブラシの種類と表記
この記事ではブラシの種類について、以下のような表記で統一しています。
それぞれの画像編集ソフトで対応するツール名に置き換えて読んでください。

 

瞳の作成:瞳

「枠線」レイヤーの下に、新規レイヤーで「瞳」レイヤーを作成します。

枠線の時と同様、資料を参考にして瞳の部分に選択領域を作成後、作りたいキャラクターの瞳の色で塗りつぶします。

色は”鮮やかすぎない明るめの色”くらいがちょうどいいと思います。

 

「枠線」レイヤーと重なる部分は「枠線」の中に被せて範囲選択してOKです。

瞳が枠線の中にはみ出していても、 枠線レイヤーの方が上にあるので重なって見えなくなるためです。

 

ここでもカーブに角がある部分は修正して滑らかにしましょう。


瞳の作成:白目

「瞳」レイヤーの下に、新規レイヤーで「白目」レイヤーを作成します。

顔パーツ写真のモールドや資料を参考にして「大体この辺が白目部分だなー」って所を選択範囲で選択して「真っ白」に塗りつぶします。

↑重なる部分はガンガンはみ出してOK!


瞳の作成:肌色

「白目」レイヤーの下に新規レイヤーで「肌色」レイヤーを作成し、好みの肌色でキャンバス全体を塗りつぶします。

 

キャンバス全体の塗りつぶしは、選択範囲を作っていない状態で「Alt + Delete」です。

さっきまでの選択範囲を作って塗りつぶす場合もこのショートカットで行えます。

※瞳全体のシルエットが完成したので、ここからしばらくは基本的に肌色レイヤーを下地にして、顔パーツ写真を見ずに製作を行っていきます。

ただし最終的には顔パーツの画像に合わせるため、たまに肌色レイヤーを非表示にして、顔パーツの上に置いた時の見え方に違和感がないか確認しながら作っていってください。


瞳の作成:白目の影

「白目」レイヤーの上に新規で「白目の影」レイヤーを作成し、「Ctrl + Alt + G」でクリッピングを適用します。

【レイヤーのクリッピング】

クリッピングを使用すると、クリッピングしたレイヤー(上のレイヤー)は、クリッピング元(下のレイヤー)に描画されている以外の部分は表示されなくなります。

この機能を使う事で、すでに描いた何かの上に重ねて色を置きたい場合などに、元レイヤーの描画範囲からどれだけはみ出して描いても元レイヤーの描画部分だけを表示させることができます。

文章で書くとややこしいですが、実際に使ってみると簡単に理解できると思います。

ツールパレットから「選択範囲」もしくは「ブラシ(硬い)」を選択し、「黄色掛かった灰色」を選んで白目の影に当たる部分を描きます。

  

ただの灰色よりも黄色掛かった灰色の方が柔らかい印象になり、美少女キャラの瞳に馴染みやすいです。(クールなキャラだと灰色~青み掛かった灰色が似合うと思います。)

また、影の範囲が広い(または色が濃い)ほど暗く沈んだ印象を受けます。キャラクターのイメージに一番合うよう調整しましょう。

影を描いたら「フィルター」→「ぼかし」→「ガウスぼかし」で気持ち程度ぼかしを掛けておきます。

 

瞳の作成:瞳の影

「瞳」レイヤーの上に新規で「瞳の影」レイヤーを作成し、白目と同様「Ctrl + Alt + G」でクリッピングを適用します。

 

ツールパレットから「範囲選択」の「長方形選択」を選んで 瞳の周りを選択した後、「グラデーション」を選んで今の瞳より暗い色で下図のようにドラッグして、瞳の影を作ります。

 
 

瞳の作成:瞳のアウトライン

「瞳の影」レイヤーの上に新規で「瞳 枠」レイヤーを作成し、さらに重ねて「Ctrl + Alt + G」でクリッピングを適用します。

 

「瞳の色を限りなく黒に近付けた色」を選択し、 「ブラシ(硬い)」で瞳のアウトラインをちょうどい太さで描いていきます。

「枠線」と隣り合う部分は「ブラシ(柔らか)」を使って馴染ませます。

 

瞳の作成:瞳孔

「瞳のアウトライン」レイヤーの上に新規で「瞳孔」レイヤーを作成し、瞳の一番暗い部分と同じ色で瞳孔を描きます。

最初に 「ブラシ(硬い)」 で描いた後、「ブラシ(柔らか)」でエッジをなぞるように描きます。

境界を完全にぼかさずに、エッジを残すように描くといい感じに見えます。

 

瞳の作成:虹彩

「瞳孔」レイヤーの上に新規で「虹彩」レイヤーを作成し、選択範囲塗りつぶしからのぼかしや 「ブラシ(柔らか)」 などを使用して虹彩の明るい部分を描き込みます。

ここはキャラクターによって形も様々ですので、資料を参考にしながら自由に描きましょう。

 

瞳の作成:ハイライト1

「枠線」 レイヤーの上に新規で「ハイライト1」レイヤーを作成し、 瞳のハイライトを「ブラシ(硬い)」「真っ白」で描いていきます。

スタンダードな描き方としては、

①斜め上に一番大きい光
②大きい光の対角線の位置に小さめの光
③装飾的な細かな光(キャラクターによって量を調整)


といった感じです。

 

ハイライトはキャラクターの印象に大きく影響を与えるので、そのキャラクターのイメージにきちんと合ったハイライトを作りましょう。

参考までに、ハイライトの位置や量によっての見え方の違いの一例を載せておきます。


瞳の作成:ハイライト2

「ハイライト1」 レイヤーの上に新規で「ハイライト2」レイヤーを作成し、 「瞳孔」の時と同じように 「ブラシ(柔らか)」を使ってエッジをなぞってぼかし効果を加えます。

ここでもエッジを残すようにぼかしを入れることで、発光しているような効果を与えることができます。

「ハイライト1」の全ての光をなぞった後、瞳の下側のあたり(下図の「ぼんやり明るく」の部分)にうっすらと大き目のハイライトを入れて、照り返しの光を加えます。

ハイライトが明るくなりすぎたら、「ハイライト2」の「不透明度」を下げて、ちょうど良くなるように光の量を調整します。

 

瞳の作成:枠線のグラデーション

「枠線」レイヤーの上に新規で「枠線 色」レイヤーを作成し、「Ctrl + Alt + G」でクリッピングを適用します。

 

「ブラシ(柔らか)」を選択して、「明るめの茶色」で上まぶたの両端を図のようにグラデーション化します。

下まぶたや二重まぶたの線、眉毛の色もここで好きなように調整してください。

   

↓クリッピングを解除するとこんな感じに…テキトーでも最終的に見えないのでOK!

 

瞳の作成:アイシャドー

瞳の周りにぼんやりアイシャドー(肌色を濃くした色)があると、よりかわいく艶っぽく見せることができます。

これまでに作成した「ハイライト2」~「白目」を「Shift + 左クリック」で全て選択し、右クリック→「レイヤーの複製」で全てのレイヤーを複製します。

  

複製されたレイヤーが全て選択された状態になっているので、 そのままドラッグで「白目」レイヤーの下に移動し、 続けて右クリック→「選択中のレイヤーを結合」で複製したレイヤーを全て1つのレイヤーに統合します。(以下「アイシャドー」レイヤーとする)

  

「アイシャドー」レイヤーを「フィルター」→「ガウスぼかし」でほどよくぼかし、さらに「編集」→「色調補正」→「色相・彩度・明度」で「彩度」を100まで上げましょう。

 

消しゴム(柔らか)で不要な部分を消去し、最後に不透明度で濃さを調整したらアイシャドーの完成です。

※キャラクターによってはアイシャドーが似合わない場合もありますので、不要だと思ったら無くしても構いません。


瞳の作成:細かな調整

瞳に必要な要素が揃ったので、瞳孔の位置やハイライトの量などを再度見直して、おかしな部分があれば調整しましょう。

キャンバスを拡大縮小したり、下地を肌色レイヤー・顔パーツと切り替えて見比べるなど、いろんな角度で見てみて違和感がないように仕上げます。

【綺麗な形はつまらない?】

箸休めにちょっとした小話を一つ。

突然ですが、私は体も心も生粋の「A型志向」で、何事もキッチリ綺麗に整っていないと気が済まないタイプの人間です。

私も嗜み程度にイラストを描いていた時期がありましたが、そんなA型志向な私は「イラストもキッチリ規則正しく描くべき!綺麗な形に描くほど完成度が上がって見える!」と信じて疑いませんでした。

線の太さは完全に一定、直線は直角形ツール・円は円形ツールを使って綺麗な形に…しかし、そうやって出来上がったイラストはどこか野暮ったさがあり、思い描いていた見栄えのある絵にはならず、それが長い間ずっと不思議の種でした。

しばらくの間イラストから離れて色々な経験をした今改めて考え直してみると、「人は形の微妙な揺らぎを面白さとして捉え、同じ太さの線・完全な円形など規則的な形だけで構成されたイラストは単調に見えてつまらなく感じやすい傾向がある」ということに気付きました。

そんなこんなで、デフォルメが強い場合などの例外を除いては、完全な円形や一定の幅の線などはなるべく使わない方がいい、というのが最近私の思うところであります。

今回の瞳データ作成に当てはめてみると、

瞳の外形 … 完全な円形でなくやや角ばった楕円
瞳孔、ハイライト … 完全な円形ではなく角の丸い多角形
瞳のアウトライン … 一定の太さでなく線幅を変える


といった感じです。

もちろん規則的な形を完全に否定しているわけではありませんので、あくまで参考程度に頭に留めておくくらいでいいです。

先ほども言った通りキャラクターによって瞳の造りは様々ですし、感じ方も人それぞれで好みの問題もあるので、結論的には自分の理想通りに作ってもらって構いません。

やや極端ですが、揺らぎのある形と規則的な形とでそれぞれ構成された瞳の比較画像を置いておきますので参考にしてください。

いざ画像を作って並べてみると、右の方もこれはこれで良いと思えなくもない…うーん…(沼ハマリ中


瞳の作成:反対側の瞳

バランス調整して「これでバッチリ!」という状態になったら、 「ハイライト2」~「アイシャドー」の全てのレイヤーを選択し、 右クリック→「レイヤーの複製」でレイヤーを複製します。

複製されたレイヤーが選択状態のまま、複製前の「ハイライト2」の上に ドラッグで 移動します。

その後「Ctlr + 左クリック」で複製後の「ハイライト1」「ハイライト2」を選択解除します。

  

「編集」→「変形」→「左右反転」でハイライト以外のレイヤーを反転させます。

 

選択状態はそのまま、ツールパレットから「レイヤー移動」を選択し、ドラッグで反転した瞳を反対側へ移動させます。(「Shift + 左ドラッグ」で真っすぐ水平に移動させることができます。)

 

残った「ハイライト1」「ハイライト2」も反転した瞳に大体合う位置まで移動させておきます。

   

瞳の作成:反転瞳のハイライト

反転後の瞳のハイライトの位置が微妙にずれているので調整します。

反転後の「ハイライト2」レイヤーは一旦削除します。

まずはハイライトの作成の項で作った「③装飾的な細かな光」の位置を瞳に合わせます。

続いて「 ②大きい光の対角線の位置に小さめの光 」の部分を範囲選択して、選択部分を「Ctrl + 左ドラッグ」で切り取って位置を合わせます。

最後に「 ①斜め上に一番大きい光 」を同様に範囲選択→切り取って位置を合わせます。

 

反転前の瞳の「ハイライト2」を作った時と同様、エッジを少しぼかすようにしてハイライトを仕上げます。


※目線が横を向いている瞳の場合

目線が横を向いていて左右対称でない瞳の場合は、反転後に瞳の目線を合わせる必要があります。

 

瞳の部分(「瞳」~「虹彩」レイヤー)を選択して、移動ツールで目線の位置を合わせます。

 

「瞳孔」レイヤーのみ選択を外して、「選択中のレイヤーを結合」で1つのレイヤーに統合します。(以下「反転瞳」レイヤーとします)

 

「反転瞳」レイヤーを「編集」→「変形」→「自由変形」でいい感じの形になるよう変形して調整します。

あんまり変形しすぎると歪んだりエッジがぼやけてしまうので微調整にとどめておきましょう。

どうしても理想の形にならない場合はブラシツールなどで描き直します。

 

枠線からはみ出した部分を消しゴム(硬い)などで消去し、最後に瞳孔・ハイライトの位置を合わせて形を整えます。

 

瞳の作成:最終調整

ここまでで両方の瞳が完成しましたので、瞳孔の位置やハイライトの量などを再度よく確認して、おかしな部分がないかチェックします。

【瞳孔の位置による視線の感じ方】

瞳孔の位置は、左右とも”瞳の中心部分からほんの少しだけ視線方向にずらす”ように配置すると、より視線が定まって「こっちを見てくれているような印象」を受けることができます。

瞳孔の位置が少しずれるだけでも視線の感じ方に大きく影響を与えるので、じっくり見比べながら位置調整してベストな位置を探りましょう。

以下はその比較画像です。

 

瞳の作成:データ完成

お疲れ様でした、これで瞳デカール用のデータの完成です。

最初に簡単にできると言っておきながら、文章で説明するととんでもなく長く複雑になってしまって、自分でも「これでほんとに簡単かな?」と不安になってきました…

一度体で覚えてしまうとやってる事自体は難しくないんですが、慣れないうちは落ち着いて一つ一つ手順を良く確認しながら作っていきましょう。

 

次回の「その2」では、今回作ったデータをシール用紙に印刷してサイズ調整~デカール用紙への印刷までを紹介します。

それではまた次の記事で。
 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。